サイトマップTokyo University of Pharmacy and Life Sciences, School of Life Sciencesサイト内検索画面へ移動します 検索

応用生命科学科   生命科学(バイオ)の力で食品・環境・エネルギーの未来を拓く

環境生命科学・環境ゲノム学・農芸化学・生命理工学分野東京薬科大学 生命科学部 大学院 生命科学研究科



 
 

円石藻データベースができました! 2016.1.26

円石藻Pleurochrysis転写産物データベースを明治大学と共同で構築、 関連論文がPlant & Cell Physiologyに掲載されました。


円石藻は、非常に美しい炭酸カルシウムの殻をもつ海産性微細藻類で、白亜紀の膨大な量の地層(石灰岩)や石油を作ったことでも知られています。そのパワフルで美しいCO2固定のメカニズムを明らかにすることを目指して、環境応答植物学研究室では、明治大学、かずさDNA研究所と共同で円石藻Pleurochrysis転写産物データベースPleurochrysomeを構築しました。謎の微生物円石藻に関心を寄せる皆さんといっしょに、さらにいいデータベースにしていければうれしいです。(論文はこちらから)

円石形成細胞(左)と非形成細胞(右)

 

中川元さんたちの論文がPLOS ONE誌に掲載 2015.9.22

中川元さんたち(生命エネルギー工学研究室)の論文がPLOS ONE誌に掲載されました。


Gen Nakagawa, Atsushi Kouzuma, Atsumi Hirose, Takuya Kasai, Gen Yoshida, and Kazuya Watanabe

<概要>
 微生物の代謝能力を制御する手法として,微生物電気化学システム(bioelectrochemical systems; BES)が注目されています。BESとは電極と微生物細胞の間に電流を流し,その刺激によって細胞内の酸化還元状態を変化させることが可能なシステムのことで,有用化合物の合成やエネルギー生産への応用が期待されています(図1)。しかし電流刺激によって微生物の状態にどのような変化が生じるのかはこれまであまり分かっていませんでした。この研究では電極との電子のやり取りが可能な細菌であるShewanella oneidensisの遺伝子改変株(グルコース資化株)を用いて,電流の変化が細胞内の遺伝子発現変化や物質代謝に与える影響を調べました。その結果,電流変化に伴って有機物代謝に関連する遺伝子(D-乳酸脱水素酵素遺伝子など)の発現量が変動すること(図2),また電流を多く流した場合に,D-乳酸の蓄積量が増加することなどが明らかになりました。この成果は,BESによって遺伝子発現をコントロールし,有用化合物の合成を促進させる手法の開発につながるものと考えています。

1. 本研究で使用したBESリアクター

図2. 電位制御による電流変化 (A) と遺伝子発現変動 (B)


この論文の筆頭著者の中川元君(H26年度修士課程修了)からメッセージが届きました!
“本研究を行う中で、いろいろなパラメーターがなかなか上手く釣り合わず、何度も頭を抱え繰り返し実験を行ったことを覚えています。今回、研究成果を発表するにあたり、ご指導いただきました渡邉先生、高妻先生をはじめ生命エネルギー工学研究室の皆様に感謝いたします。中川元”


 

Annual Symposium of the Protein Societyで発表。2015.7.

The 29th Annual Symposium of the Protein Societyで発表しました


博士過程3年の八木創太君と修士過程2年の梶亜純さん(極限環境生物学研究室)が、7月22日-25日にバルセロナで開催されたThe 29th Annual Symposium of the Protein Societyに参加、発表を行いました。(いっしょに参加された赤沼先生 (現早稲田大・人間科学学術院) より素敵な写真が届きました。)

八木創太君

学会会場

梶亜純さん

 

シアノバクテリアにおける亜硫酸耐性機構 2015.6.3

小林さん達 (環境応答) の論文が Plant & Cell Physiology に受理されました。

Satomi Kobayashi, Mikio Tsuzuki & Norihiro Sato
<概要>
 亜硫酸は植物生体内では硫黄同化経路の中間代謝産物ですが、過度に存在すると毒性を示します。この亜硫酸は、特に新興国では化石燃料の燃焼に伴い多量に排出され、作物を枯死させる酸性雨の主要な原因物質ともなっています。これまで主に陸上植物を用いて、亜硫酸が光合成能や生育に傷害を与えることが示されてきましたが、その傷害のメカニズムに関してタンパク質や遺伝子レベルでの研究は皆無でした。本研究では、植物の葉緑体のモデル生物であり、生化学的、遺伝学的解析が容易なシアノバクテリアを用いて、亜硫酸による光合成系の傷害の過程を解析しました。その結果、亜硫酸ストレスの負荷に伴い、細胞の生育が抑制されることが確認されました (Fig. 1A)。同時に、光合成系では、光化学系I (PSI) 複合体の三量体が活性を維持したまま単量体化すること (Fig. 1C)、そして光化学系IIに関しては、その構造の不安定化とそれに伴う不活性化 (Fig. 1D, 黒三角) が認められました。驚いたことに、亜硫酸ストレスにより、生育が抑制された細胞でも、そのストレスから解放されると、通常通りの生育を示しました(Fig. 1B)。つまり、細胞は亜硫酸ストレスに適応していたと考えられます。今後は、光化学系の構造的、そして機能的変化がいかに細胞の亜硫酸耐性能の獲得につながるのか明らかにし、その知見をもとにシアノバクテリア、さらには植物へ亜硫酸耐性能を付与できればと考えています。

 

森田慎一さんたちの論文が Gene 誌に掲載 2015.3.5

森田慎一さんたち(応用微生物学研究室)の論文が Gene 誌に掲載されました。

「オオミジンコにおけるsingle-minded の時間的、空間的発現とその機能の解析」

 (概要)左右対称の動物(左右相称動物)は正中線により右左に分けられる。この正中線に存在する細胞群の形成はショウジョウバエに代表される昆虫類と一種類の高等甲殻類では single-minded (sim) と呼ばれる遺伝子により調節されることが明らかとなっている。また、節足動物に属するカギムシ類、クモ類、多足類の sim の発現解析より、節足動物が進化する過程で多足類、甲殻類、昆虫類の正中線細胞群が腹部神経外胚葉に由来する仮説が唱えられている。今回、多足類と昆虫類の間に位置する甲殻類の一種であるオオミジンコにおける SIM の時間的、空間的発現解析により、オオミジンコでは SIM は腹部神経外胚葉と正中線細胞に発現していることが明らかとなり、前述の仮説を強く支持する結果となった。さらに、RNA 干渉法による sim 発現のノックダウンにより正中線細胞が著しく減少したことから、オオミジンコの single-minded は正中線細胞の形成に関与していることが示唆された。また、オオミジンコの sim は正中線細胞の形成のみならず、正常な腹部外胚葉の形成に必要であることが明らかとなりました。これらの結果より、節足動物における正中線細胞の機能と single-minded の機能は進化の過程でそれぞれ多様な機能を獲得し多可能性が示唆された。

 
胚発生における single-minded タンパク質の発現組織
 

硫黄源の欠乏が、TG蓄積を誘導する 2014.8.18

佐藤淳史さんたち(環境応答植物学研究室)の論文が frontiers in PLANT SCIENCE に受理されました。


Atsushi Sato, Rie Matsumura, Naomi Hoshino, Mikio Tsuzuki and Norihiro Sato

<概要>
 光合成生物である藻類は窒素源が枯渇すると、細胞内にトリアシルグリセロール(TG)を蓄積します。本研究では、緑藻クラミドモナスを生物材料として、硫黄源の欠乏がTG蓄積の誘導条件であることを新規に示し(図1)、さらにそのメカニズムに迫りました。その結果、炭素代謝がタンパク質合成系からTG合成系へと大きく流れを変えること、それと同時にTGの合成系遺伝子の発現が、窒素欠乏とは異なる、硫黄欠乏特異的な様式で誘導されること、以上の2点が硫黄欠乏下でのTG蓄積に重要であると認めました。TGは食用油として、またバイオ燃料の原料として重要です。今後は、本研究を発展させ、藻類でTG生産を効率化させたいと考えています。


1. 栄養欠乏がTG蓄積に及ぼす影響

硫黄(S)、窒素(N)またはリン(P)が欠乏したクラミドモナスの細胞をナイルレッドで染色し、脂肪滴(TGを含む黄色の顆粒)を蛍光顕微鏡で観察した。


 

節足動物の感桿型光受容細胞の分化には、共通した転写機構が存在する

森田慎一さんたち(応用微生物学研究室)の論文「汎甲殻類生物の光受容細胞分化に共通した転写機構」が PLOS GENETICS 誌に掲載されました。


Common Transcriptional Mechanisms for Visual Photoreceptor Cell Differentiation among Pancrustaceans

Simpla Mahato, Shinichi Morita, Abraham E. Tucker,Xulong Liang, Magdalena Jackowska, Markus Friedrich, Yasuhiro Shiga, Andrew C. Zelhof

<概要>
 生物の光受容細胞は光子を効率良く受け取るために膜構造をとりますが、その膜が繊毛由来のものは「繊毛型光受容細胞」、細胞膜が変化してできたものは「感桿型光受容細胞」と呼ばれています。昆虫類や甲殻類が属する節足動物や多くの軟体動物の光受容細胞は「感桿型」であることが知られていますが、その分化の分子機構に関しては節足動物のモデル生物である昆虫類のショウジョウバエにおける知見がほぼ唯一のものであり、昆虫類と甲殻類(両者をまとめて「汎甲殻類生物」と呼びます)の感桿型光受容細胞が分化する際に共通した分子機構が進化上保存されているのかどうか謎のままでした。本学科応用微生物学研究室の博士過程3年の森田慎一さん、志賀靖弘助教を含む国際研究グループは、別種の昆虫類であるコクヌストモドキ(Tribolium castaneum)と甲殻類に属するオオミジンコ(Daphnia magna)という2種の節足動物を用いてこの問題に取り組み、これらの生物における感桿型光受容細胞の分化の2つの最重要ステップ(光を検出する r-オプシンの発現および光伝達装置を収納する感桿分体/rhabdomere の生成)において、ショウジョウバエと同様にPph13とOrthodenticle(Otd)という、ホメオドメインを有する2種類の転写因子が必須であること、更にコクヌストモドキとオオミジンコの Pph13とOrthodenticle はショジョウバエにおける相同遺伝子の変異を一部または完全に相補できることを明らかにしました。これらの結果は、甲殻類と昆虫類が分岐した約5億年前の段階で、感桿型光受容細胞分化の分子機構は既に完成していたことを強く示唆します。



(左)オオミジンコ複眼における Pph13 mRNA の発現
(中)オオミジンコ複眼/単眼におけるOTD1(緑)およびOTD2(紫)の発現
(右)オオミジンコ複眼における 長波長 A clade r-opsin mRNA の発現
 

極限環境生物学研究室の玉腰准教授らの論文がNature Communications誌に掲載

北海道大学、理研、高輝度光科学研究センター(JASRI)、東京薬科大学(玉腰雅忠准教授)、共和化工株式会社環境生物学研究所(大島泰郎 本学名誉教授、本学卒業生 森屋利幸博士)は、X線レーザーを用いて生きた細胞をナノメートル(10億分の1メートル)の分解能で観察することに成功しました。本研究成果は、2014年1月7日付で英国のオンラインジャーナルNature Communications」に掲載されました。


北海道大学によるプレスリリース (PDF)

Nature Communications (英語)


極限環境生物学研究室のHP


 

阿部貴則さんたち(環境応用動物学研究室)の論文が受理されました!

阿部貴則さんたち(環境応用動物学研究室)の論文がJournal of Biological Chemistryに受理されました。


N-terminal hydrophobic amino acids of ATF5 confer IL-1β-induced stabilization


Takanori Abe, Masaki Kojima, Satoshi Akanuma, Hiromi Iwashita, Takashi Yamazaki,

Ryuichi Okuyama, KenjiIchikawa, Mariko Umemura, Haruo Nakano, Shigeru Takahashi, and Yuji Takahashi

<概要>
   Activatingtranscription factor 5 (ATF5) の発現はストレスに応答してmRNA, タンパク質レベルで上昇する一方ストレス非存在下ではその発現は抑制されている本論文で
炎症制サイトカインであるinterleukin 1β (IL-1β)によりATF5タンパク質の安定性が上昇し、細胞内のタンパク質量が増加すること。この安定化にはATF5タンパク質のN末端領域の疎水性アミノ酸が重要である事を見いだした。ATF5タンパク質の立体構造をRobettaserverにより計算したところ、疎水性アミノ酸に富んだN末端領域のα-ヘリックスが疎水性ネットワークを形成している事が予想された。この領域は平常時の不安定化領域そしてIL-1β応答領域として機能していた。さらにIL-1βATF5 mRNAからタンパク質への翻訳にも作用し、翻訳開始因子eIF2αのリン酸化を介してATF5 mRNA翻訳効率上げること。その結果、細胞内に蓄積したATF5タンパク質は急性期応答タンパク質であるSerum amyloid ASerum amyloid B mRNAIL-1βによる発現上昇を抑制した。これらの結果はATF5の免疫応答における負のレギュレーターとしての働きを示唆するものである。本研究は生物情報科学研究室の小島正樹先生と極限環境生物学研究室の赤沼哲史先生のご協力のもと行われました。

1. Robetta serverにより推定したATF5 N末端(1−27アミノ酸)の3次元構造

      Leu3(青), Leu4 (シアン), Leu7 (緑), Leu9 (マゼンダ), Leu11 (オレンジ), Leu15 (黄)で示した。N末端領域のα-ヘリックスは疎水性ネットワークを形成している事が予想された。ATF5分子の表面に露出したこのような疎水性ネットワークがATF5タンパク質の安定性に関与している。


 

シンプルな方法でクロレラにバイオ燃料の原料を作らせることに成功!

白武拓磨さん、佐藤淳史さんらの論文が PLOS ONE に掲載されました。


Air-drying of cells, the novel conditions for stimulated synthesis of triacylglycerol in a green alga, Chlorella kessleri
Takuma Shiratake, Atsushi Sato, Ayumi Minoda, Mikio Tsuzuki, and Norihiro Sato
<概要>
 中性脂質の1つ、トリアシルグリセロール(TG)は古来より食用油として、また最近ではバイオ燃料の原料として利用されています。緑藻等の藻類では、通常の培地で生育させた細胞を窒素欠乏培地に移すとTGの蓄積が誘導されます。本研究では、新たなTG蓄積条件を探るため、緑藻クロレラの細胞をガラスフィルター上に置き、4日間乾燥させました(図A, B)。その結果、TGが脂肪酸ベースで全脂質の70.3 mole%、あるいは細胞乾重量の15.9 %(w/w)を占めるまでに蓄積しました(図C, D)。さらに詳しく調べたところ、この空気乾燥によるTG蓄積は、乾燥と栄養欠乏の混合ストレス条件によるものであること、そして光合成を必要とすることが見出されました。細胞の空気乾燥というこの新たな手法は従来の窒素欠乏法と比べると、培地の交換を必要としないため操作がシンプルです。さらに、従来法では脂質抽出のため、電力を使って細胞を乾燥させていましたが、その電力消費が抑えられるというメリットもあります。今後、藻類の空気乾燥法は油脂産業での利用が期待されます。



 

タンパク質の翻訳と連動したストレスによるmRNA安定性調節機構

幡野仁哉さんたち(環境応用動物学研究室)の論文がFEBS Journalに受理されました。

The 5’-Untranslated Region Regulates ATF5 mRNA Stability via Nonsense-Mediated mRNA Decay in Response to Environmental Stress
Masaya Hatano, Mariko Umemura, Natsumi Kimura, Takashi Yamazaki, Hitoshi Takeda, Haruo Nakano, Shigeru Takahashi, Yuji Takahashi
<概要>
 Activating transcription factor 5 (ATF5) の発現は、ストレスに応答してmRNA, タンパク質レベルで上昇する。一方、ストレス非存在下では、その発現は抑制されている。本論文で、ストレス非存在下で抑制されているATF5 mRNAの発現がストレスにより上昇するメカニズムを解明しました。ATF5のmRNAには、ATF5のタンパク質をコードする部分の他に5`非翻訳領域にさらに2カ所のタンパク質をコードする部分が存在しています。私たちは既に、ストレスがない状態では、ATF5タンパク質部分は翻訳されず、 5`非翻訳領域にあるタンパク質の部分が翻訳されること。一方、細胞が、栄養欠乏やヒ素暴露などのストレスを受けると翻訳開始点がmRNAの下流に移動しATF5タンパク質の翻訳が起こる事を解明しております。本論文では、ストレスがない状態で起こる5`非翻訳領域にあるタンパク質部分の翻訳の終結が異常な終結であると認識され異常な翻訳終結を認識するNonsense-Mediated mRNA Decay (NMD)機構によってATF5 mRNAが分解を受けること。ストレス下では翻訳が正常に終結する為にNMDによる分解を免れ、ATF5 mRNAが安定化する事がわかりました。従来からmRNAの安定性と翻訳が連動している事や、5`非翻訳領域がmRNAの安定性に関わっている事は知られていましたが、5`非翻訳領域がストレスに連動してNMDによるmRNAの安定性に関与する事を示した新しいストレス応答の例です。
 

ミニシンポジウムが開催されました

ミニシンポジウム『生命の起源に魅せられて』が開催されました

日時:12月22日
場所:東京薬科大学

田村浩二(東京理科大・生物工学)「アミノ酸のホモキラリティーとtRNA」 
山岸明彦(東京薬科大・生命科学)「火星での生命探査計画」 
渡辺公綱(東京薬科大・生命科学/東京大・名誉教授)「ミトコンドリア翻訳系から遺伝暗号の起源を探る」 
姫野俵太(弘前大・農学生命)「2つのtRNA/mRNAハイブリッドによるトランストランスレーション」 
郷 通子(情報・システム研究機構/名古屋大、お茶大・名誉教授)「イントロンの起源と選択的スプライシング」 
大島泰郎(共和化工/東京工業大、東京薬科大・名誉教授)「Magic 20と生命の起原」 
清水幹夫(宇宙科学研究所・名誉教授)「単一アミノ酸触媒によるEMP回路の形成」
総合討論
(連絡先:極限環境微生物学研究室 横堀 伸一)


    
 

宮下振一さんたちの論文が受理されました

宮下振一さんたち(環境応答植物学研究室)の論文がEnvironmental Chemistryに受理されました

Cyanobacteria produce arsenosugars

Shin-ichi Miyashita, Shoko Fujiwara, MikioTsuzuki and Toshikazu Kaise

<概要>
 海水及び淡水中に存在する無機ひ素は、一次生産者である藻類に取り込まれて高濃度に蓄積され、その一部がアルセノシュガー(左図参照)等の有機ひ素化合物へと代謝されることが知られています。アルセノシュガーは、魚類・甲殻類等の高次捕食者に多く含まれるアルセノベタインの前駆体と考えられていることなどから、水圏生態系におけるひ素の循環において重要な役割を担っていると考えられています。環境中に広く存在する一次生産者であるシアノバクテリアは、無機ひ素の還元及びメチル化能について古くから調べられてきましたが、アルセノシュガーの生成能についてはこれまでよく分かっていませんでした。
 本研究では、純粋培養した淡水性のシアノバクテリア(シネコシスティス及びノストック)に無機ひ素を曝露し、細胞を継時的に回収して細胞内のひ素代謝物を機器分析により詳細に解析しました。その結果、両シアノバクテリアは無機ひ素からアルセノシュガーを速やかに生合成できることが明らかになりました。このことは、藻類だけでなくシアノバクテリアも高次捕食者へのアルセノシュガー供給源になりうることを示唆しており、水圏生態系におけるひ素の循環を理解する上で重要な発見であったと考えています。(宮下)
 
図.シアノバクテリアから見つかったアルセノシュガー(左)とノストック(右)
 

岡田先生たちの論文がPlant and Cell Physiologyに受理されました

岡田克彦先生(環境応答植物学研究室)たちの論文がPlant and Cell Physiologyに受理されました


Two Regulatory Networks Mediated by Light and Glucose
Involved in Glycolytic Gene Expression in Cyanobacteria

Yosuke Tabei, Katsuhiko Okada, Eisuke Horii, Mayuka Mitsui, Yoshiaki Nagashima, Tsutomu Sakai, Takuya Yoshida, Akio Kamiya, Shoko Fujiwara and Mikio Tsuzuki

<概要>

光合成生物にとって光はエネルギー源であり、生育環境の光条件に応じて代謝や遺伝子発現の状態を変化させることは、生存のために極めて重要です。明所では光合成を行い、糖やデンプンなどを合成します。一方、暗所では貯蔵された糖を分解し、エネルギーを得ます。この際、明所と暗所では代謝の方向が逆となるため、それに関わる酵素の遺伝子発現も切り替える必要があります。特に単細胞生物であるシアノバクテリアは細胞内小器官を持たないため、糖代謝関連酵素の遺伝子発現は厳密に調節される必要があります。シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803株は、光合成での生育に加え、暗所でもグルコースを炭素源とした従属栄養的な生育も可能です。この従属栄養的な生育には短時間(5/1日程度)の光照射が必要なことが知られていましたが、糖代謝関連酵素群と光照射の関連については未解明でした。

本研究では、Synechocystis sp. PCC 6803株の糖代謝関連酵素の遺伝子発現とそれに関与する“光”に着目し、解析を行いました。その結果、光合成系と解糖系の両経路に関与する酵素の1つであるフルクトース-1,6-ビスリン酸アルドラーゼをコードする遺伝子fbaAの発現にはSll1330と呼ばれる転写調節因子、およびHik8と呼ばれるリン酸化タンパク質が大きな役割を果たしており、これらの遺伝子を破壊した株では、従属栄養的な生育の抑制と共にfbaAの遺伝子発現が抑えられていました。ところが、興味深いことにsll1330およびhik8遺伝子を破壊しても光合成を行う条件ではfbaAの発現は野生株と同様に誘導されていたことから、この遺伝子の発現調節には光合成系に関与する“光”情報伝達経路、および解糖系に関与する“光”情報伝達経路の2つの独立した経路が存在していることが明らかとなりました。このように、糖代謝関連酵素の遺伝子発現に独立した“光”情報伝達経路が作用する例はこれまでになく、代謝酵素と情報伝達ネットワークを考える上で新たな発見と言えます。

 

研究最前線

社会が求める光合成研究 ~ 微細藻類からバイオ燃料は作れるか?    
(東薬ニュースレター108号 研究最前線⑪より転載)

環境応答植物学研究室 教授 都筑幹夫

都筑幹夫先生

 今年の夏も電力不足が懸念されています。原子力発電に依存してきたわが国では、エネルギーの確保が大きな課題です。そこで、食糧と競合しないバイオマス資源に注目が集まり、廃材などのセルロース資源の活用と微細藻類によるバイオ燃料生産技術の開発が期待されています。
 特に微細藻類の多くは、光合成を行う細胞のため光合成効率がよく、将来のバイオマス資源と考えられています。しかし、実用化のめどは立っていません。実用化には、物、量、コストの3つの壁が立ちはだかっています。生物が石油をつくるなどとはすぐには考えにくいことと思います。しかし、中近東などの油田は微細藻類が起源と言われています(学部・学科のHP、豆知識)。また、微細藻類は、“細胞内共生”とはいいますが、実は細胞間どうしの闘い、捕食被食によって生じた極めて多様な生物群なのです。緑藻ボトリオコッカスや円石藻エミリアニアなどは以前から炭化水素を貯めることが知られていました。最近、増殖のはやい緑藻クラミドモナスやクロレラでも、条件によってトリグリセリド(TG)を蓄積することが明らかになりました。微細藻類は、種により、あるいは生育条件により、バイオ燃料となりうる化合物を合成するのです。

生命科学部のボーリング大会にて。

 次の壁は量とコスト。生産コストの視点から、今はレースウェイとよばれる人工池での大量培養が主流です。しかし、膨大な土地と十分高い温度が必要なため、国外の低緯度地域にその場所を求めることになります。そこで、研究室では、国土の狭い我国でも大量かつ年中培養できるような新たな培養システムを開発しているところです。

■ 光合成の基礎研究
 一方、この原稿の執筆中に、ヒ素耐性に関わる投稿論文が受理されました。たいへんうれしいことです。こちらは基礎研究。クラミドモナスには、リン酸輸送体の遺伝子が10個程度存在します。その中にはヒ酸も輸送するものがあり、光合成が行われる時に、そのリン酸輸送体の遺伝子が発現して、ヒ酸取込みを増すことが明らかになってきました。40年ほど前、ヒ酸耐性株から多くの光合成変異株が選抜され、光合成研究に利用されました。今頃になって、なぜヒ素耐性株から光合成変異株が得やすかったのか、そのつながりがわかってきたのです。

微細藻類のさまざまな培養形態。


 その昔、シアノバクテリアの酸素発生は地球の環境を変え、生物の進化を促してきました。生物が上陸できたのもその酸素によりオゾン層ができたからです。シアノバクテリアから光合成真核細胞(微細藻類)が誕生し、それが多様化しました。今日、水界生態系の一次生産者として、私たちの生活を含めた地球のエネルギー循環の根幹をなしています。微細藻類の光合成研究には、エネルギーをめぐる生物間の闘いの跡を探る、生命のしくみや進化を知るロマンと、バイオマス資源という新たな富を閉塞気味の社会に提供して、社会を明るくしたいという夢があります。研究室の皆でそれを追いかけているところです。
 

東浦先生が町の博物館と市民公開シンポジウムで講演を行いました

東浦 康友 先生 (生態学研究室) が北海道の博物館と市民公開シンポジウムで講演を行いました

日時:7月7日(土)午後3時〜4時30分
場所:北海道虻田郡倶知安町 倶知安風土館
演題:マイマイガのふしぎ~大害虫の正体~

日時:9月21日(金)午後2時10分〜2時40分
市民公開シンポジウム:「2010年十勝で発生したマイマイガ」
場所:帯広畜産大学 大講義室
演題:北海道で大発生したマイマイガの個体群動態
 

藤原祺多夫教授(生命分析化学研究室)の記事が東薬ニュースレターに

藤原祺多夫教授(生命分析化学研究室)の記事が、東薬ニュースレター「シリーズ研究最前線」に掲載されました。

「私の分析化学:蛍光相関法の出会いから、付き合う事10年」

東薬ニュースレター106号 p.6 に記事が掲載されました。
 

応用微生物学研究室の研究成果がScience誌に掲載されました。

「ミジンコの環境応答性ゲノム」を解読
本学も参加した国際チームがScience誌に発表

 生態系保全や環境汚染評価に重要な淡水性の微小甲殻類であるミジンコ (Daphnia pulex) のゲノム配列を米国インデイアナ州立大学や本学のグループを含む国際研究共同体が解読し、2月4日米科学誌Scienceに発表しました。この論文では、ミジンコゲノム中にはこれまでにゲノム配列が決定された動物の中で最も多い遺伝子が詰め込まれていること、その1/3以上はミジンコにだけ発見された遺伝子であること、その多くが環境の変化に特異的に応答する遺伝子であり、多重化する傾向が強いことなど、他の生物で見られなかった多数の特徴が発見されています。これらの発見に基づいて、これまでの実験室内モデル生物の解析では検知できなかった遺伝子やゲノムの動的な性質を明らかにし、環境ゲノム学と呼ばれる新しいゲノム研究の視野の重要性を提示しています。
 本学応用微生物学研究室の研究グループ(山形秀夫名誉教授、時下進一講師、志賀靖弘助教)は、世界に先駆けてミジンコ類の遺伝子解析を開始し、国際研究共同体の中で重要な役割を果たしてきました。今回は別種のミジンコであるオオミジンコ (Daphnia magna) の環境応答遺伝子群と形態形成遺伝子群の遺伝子配列を決定し、Daphnia pulexの配列と比較することでこれらの遺伝子群の詳細な注釈を行いました。また、ミジンコのヘモグロビン遺伝子は高度に多重化し、その環境応答性を多様化させる一方で、遺伝子のタンパク質をコードする領域を均一化して不活性化を防ぐ機構が働いていることを明らかにしました。これらの成果はこの論文の重要な構成部分となっています。