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応用生命科学科   生命科学(バイオ)の力で食品・環境・エネルギーの未来を拓く

環境生命科学・環境ゲノム学・農芸化学・生命理工学分野東京薬科大学 生命科学部 大学院 生命科学研究科



 
 

ー特集ー

教員・博士研究者となって活躍する卒業生


本学科・大学院を卒業し、教員・研究者となって活躍されている卒業生の方々の声を紹介します. 

大学教員・博士研究者
  1. 息子も微生物に興味深々。加藤 真悟 さん

    国立研究開発法人 海洋研究開発機構 (JAMSTEC) 加藤 真悟 さん
  2. コロンビア大学  博士研究員 山崎 高志 さん
  3. Université de Paris-Sud XI  博士研究員 小野寺 威文 さん
  4. 筑波大学 生命環境系 助教 JST さきがけ研究員 蓑田 歩 さん
  5. 産業技術総合研究所 計測標準研究部門 無機分析科 環境標準研究室 研究員 宮下 振一 さん
  6. リバネス 代表取締役CEO、ユーグレナ 技術顧問 丸 幸弘 さん  
  7. 協同乳業 研究所 技術開発G 勤務 原 来人 さん
  8. 国立遺伝学研究所 照井 敬子(旧姓 渡辺)さん  
  9. 千葉科学大学 薬学部 講師 照井 祐介 さん  
  10. 東京大学 大学院 農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 特任助教 吉田 拓也 さん  
  11. POSTECH Department of Life Science 山岡 靖代 さん  
  12. UC Davis Department of Plant Sciences 緑川 貴文 さん  
  13. 東京都立産業技術研究センター 木下 健司 さん  
  14. 広島大学 講師 味八木 茂 さん  
  15. 慶應義塾大学 医学部 薬理学教室 助教 加藤 靖浩 さん  
  16. 東京大学 大学院 総合文化研究科 特任研究員 斎藤 昌幸 さん  
  17. 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 鈴木 忠宏 さん  
  18. アメリカ国立衛生学研究所 /国立がん研究所(NIH /NCI) 今清水 正彦 さん  
  19. 京都大学 生態学研究センター /山口大学 医学系研究科 杉本 貢一 さん  
  20. 京都府立医科大学 助教 上 大介 さん  
  21. 農業生物資源研究所 研究員 小林 功 さん
中学校・高校教員
  1. 東京都足立区立渕江中学校 教諭(理科主任)稲葉 剛 さん  
  2. 東京都私立中学・高等学校 教諭 相亰  里奈 さん  
  3. 福岡県福岡市立中学校 教諭 阿部 良明 さん  
  4. 東京都足立区立中学校 教諭 稲葉 剛 さん  
  5. 神奈川県立秦野養護学校 教諭 幡野 仁哉 さん

ニュース

 
総合的な「人間力」を!

加藤 真悟 さん

生命科学部7期生 大学院博士課程修了 (細胞機能研究室、現・極限環境生物研究室)
国立研究開発法人 海洋研究開発機構 (JAMSTEC) 特任研究員


Delaware大学のラボメンバーと。
右から2番目が筆者。

 生命科学部7期生の加藤真悟です。在校生や受験生に向けて面白おかしいメッセージをください、という依頼を受けたのですが、そういったセンスは持ち合わせていないので、一研究者の月並みの経験談しか送れません。それでも皆さんの今後の進路などを考える上で、何かの足しになれば幸いです。
 私は、細胞機能研究室(現・極限環境生物研究室)で学位を取得した後、同研究室、理化学研究所、米Delaware大学と渡り歩いて、現在は海洋研究開発機構というところで特任研究員という肩書きで、鉄を食べて生きている微生物についての研究を続けています。
 学部・院生のときは、誰でもできるような流行りの手法でデータを出して、研究をしているつもりになっていましたが、当然論文にまとめる段階で、その研究内容の「ストーリー性」の無さに気づかされて、博士過程後期のある時期に行き詰まってしまいました。なんとか学位審査までには、それなりのストーリーを展開できたのですが、その時の苦悩は今でもよく覚えています。研究者として生きていくには、ただ黙々とデータを出すだけでなく、面白いストーリーを自分で展開する力を培っていかなければなりません。そんな当たり前のことに気がつくのに、結構な時間を費やしてしまいました。その過程を温かく見守り、そして導いてくださった指導教員の山岸明彦教授には心から感謝しております。学生時代に真剣に悩んで、周りの助けを借りながら、一つ大きな壁を乗り越えた、という経験は、今でも研究者を続けていられる原動力のひとつです。
 自分のわがままを通して、自分のやりたい研究を続けるためには、面白いストーリーを考えるだけではダメで、その面白さを外にうまくアピールできなければいけません。うまくアピールできると、他の人が興味をもってくれるので、人脈が広がりますし、研究を進めるためのお金を獲得しやすくなります。そうすると、より大きなストーリーを構築できるようになります。理化学研究所とDelaware大学での研究は、生活費込みですべて助成金によってサポートしていただいて、完全に独立した立場で、やりたい研究を好きなだけやらせてもらいました。そのときのラボメンバーはもちろんのこと、そのつてを通じて様々な機関・分野・考え方の研究者とも仲良くなることができました。異なる研究機関を数年ごとに渡り歩くことは結構大変ですが、その間に作り上げた「多彩で強固な人脈」は大きな財産です。

息子も微生物に興味深々。

 海外研究者との人脈づくりは、私がDelaware大学に留学した理由の一つです。1年半ほど滞在してきました。Delaware大学は、米国東海岸のDelaware州というちょっとマイナーなところにあります。米国人でもどこにその州があるのか知らない人が結構いて、Dela…where?という自虐的な洒落が書かれたTシャツが近所のスーパーに売られていました。もちろん研究では、著名な方々が在籍されている素晴らしい大学です。実は、同じ大学の同じラボに、その留学のちょうど1年前位に、2ヶ月ほど短期で滞在したことがありました。そのときはかなりお客様扱いで、向こうのボスとはお互い様子を探りあいながら、それほどぶつかり合うこともありませんでした。しかし、2度目の滞在の1年半の間では、お互い隠していた(?)地が出はじめて、遠慮なく大いに意見を言い合える間柄になりました。はたからみたら、かなり激しく言い合っているようだったらしく、他のラボメンバーから心配されることもしばしばありましたが、よりよいストーリーを構築するためには時には議論を戦わせることも不可欠であると、私もボスも割り切っていて、特に仲が悪くなることはありませんでした(と、私は信じています)。こういった深い関係を築けたことは、非常に大きな収穫です。また、そのような関係を築くためには、学会とか短期留学とかで、ちょろっと話すだけでは時間が足りなくて、少なくとも1年くらいの時間が必要なのかな、とも思います。
 「面白いストーリーを展開」したり、「多彩で強固な人脈」をつくったりするには、もちろん専門的かつ幅広い知識は欠かせませんが、それだけでなく、総合的な「人間力」(抽象的でわかりづらいですが、例えばコミュニケーション能力とか、発想力とか、忍耐力とか、そういうものをすべてひっくるめたものです)も高める必要があります。人間力は、研究者だけに必要なものではなくて、どんな進路に進んでも将来必要になってくるものだと思います。私も学生として過ごせた期間のうちに、意識して「人間力」を高める努力をもっとしてくればよかった、と今になって大いに後悔しています。在校生や受験生の皆さんは、各々いろいろな時間の過ごし方をされていると思います。ここに書いたような経験をした一人の研究者が、こんな後悔をしているんだな、ということを知ることで、皆さんの何か新しいアクションのきっかけになるのであれば、これほど嬉しいことはありません。
 
世界の大都会で研究を!

山崎 高志 さん

2013年 大学院博士課程修了(環境応用動物学研究室)
コロンビア大学
 博士研究員
(山崎さんの留学体験記は『実験医学』(2015年2月号)にも掲載されました。)

世界の大都会で研究を!

ラボメンバー、奥でハシゴのところにいるのがボスのJim.
左一番前、筆者。

 私は現在米国のニューヨーク州にあるコロンビア大学にて博士研究員として研究を行っています。コロンビア大学は新年のカウントダウンで有名なタイムズスクウェアから地下鉄で15分、マンハッタン島では数少ない閑静な住宅街(モーニングサイド地区)にあり、毎朝ニューヨーク市内を走る観光バスの客さんに見下ろされながら通勤しています。
 僕の所属しているJames Manley博士の研究室では転写やスプライシング、RNAプロセッシングといった遺伝子発現の根幹をなす分子メカニズムの解明に取り組んでいます。今日では分子生物学の教科書を見ればたくさんの分子メカニズムが載っていて、一生懸命勉強した人もいるかと思います(僕も勉強しました!)。かっこよく言えば自分が学んだ教科書の続きを今度は自分が解明して作り上げていくという感じでしょうか。そう思うと少しワクワクしてきませんか?
 ラボメンバーはアメリカ、フランス、中国、日本、ロシア etc.からと非常に多国籍で、いかにも人種のサラダボウル、ニューヨークといった感じです。ラボの中では英語だけでなく、あっちではフランス語、こっちでは中国語、僕は日本語と多言語が飛び交っています。いきなり友人からヘブライ語で話しかけられたこともあります。生まれて初めて「何語やねん!」って突っ込みました。
 ニューヨークについてはファッションやアミューズメントなどあらゆる流行を生み出す街と言われていますが、実は研究もすごいのです。狭いマンハッタン島にはコロンビア大学の他にもロックフェラー大学、コーネル大学、メモリアルスローンケタリングがんセンターなど世界屈指の研究機関が立ち並んでいます。もし、ニューヨークに旅行する機会があったら、大学や研究という別の視点をもって町を散策してみてください。きっとニューヨークは研究の町として別の顔をあなたに見せてくれると思います。ちなみに僕の友人曰くコロンビア大学でいい研究をする秘訣は「ニューヨークの誘惑に勝つこと」だそうです。

全ては「あなた」次第、グローバルな時代だからこそ、東薬大を使い倒して!

コロンビア大学の名物でもあるALMA MATER像とLOW LIBRARY。いろんなドラマや映画で登場します。

 日本純粋培養の平凡な学生生活をおくった私ですが、幸運にも研究員として留学できたことによって今更ながら多くのことを肌で感じることができています。学生時代に自分はまさに「井の中の蛙」だったのだと思います。そしてバケツの中を意気揚々と泳いでいたら、いきなり日本海にぶち込まれたような感じでしょうか。
 ご存知の方も多いと思いますが、コロンビア大学は世界大学ランキングでもトップ10常連の世界屈指の名門大学です。学生は母国語、英語、さらには第二外国語まで使いこなし、バリバリと専門的な知識を勉強しています。その傍らではしっかりとサークルやクラブ活動にも取り組んでいるようです。私は研究で帰宅が深夜12時を回ることもありますが、そんな深夜でもフリースペースではまだ多くの学生が一生懸命に勉強しています。
 実際に研究留学をしてみて思ったことですが、コロンビア大学の研究設備は東京薬科大学とほとんど変わりありません。言い換えれば東京薬科大学の研究設備は十分に世界レベルだということです。もし学生一人当たりに換算するならば東京薬科大学の方が潤沢なのではないでしょうか。さらにインターネットの普及で世界中の論文はクリックひとつで読むことができます。勉強や実験的なことでつまずいたら、経験豊富な東京薬科大学の先生に指導してもらえます。他の総合大学に比べれば学生数に対して先生の数も多いですし、親身になって話を聞いてくれるでしょう。またその気になれば世界中の有名な先生を紹介してもらって、メールでなどで直接意見をもらったり、アドバイスをもらったりすることもできます。外国語を学びたければ大学のネイティブの先生と会話したり、論文を書いて持っていけば添削もしてくれるでしょう。結局、何が言いたいかというと、すべて「あなた」次第だということです。
 若い学生の皆さん、僕らは望まずともあらゆる機会を目の前に「どうぞ」と与えられた時代を生きています。やる気次第でなんでもできるのです。残念ながら大学を卒業するとき、就職するときになって「〜だったのでできませんでした」という言い訳はほぼできません。
 ただ授業を受けるだけではなく、視野を広く、志を高くもって積極的に大学を使い倒してください。そうすれば東京薬科大学はあなたにとって最高の学びの場になると思います。皆さんにとって一生に一度の青春のキャンパスライフです。バイト、遊び、恋愛、クラブ活動、やりたいことは盛りだくさんでしょう。自分のポテンシャルを信じて思いっきり行動して最高のキャンパスライフを送ってください。

2015
年2月25日
極寒のNYより
山﨑 高志
 
海外便り 〜フランス滞在記〜

小野寺 威文 さん

2013年 3月 東京薬科大学大学院 博士課程修了 (環境分子生物学研究室、現・応用微生物学研究室)
2013年 5月 日本原子力研究開発機構(日本学術振興会特別研究員PD)  
2013年   Université de Paris-Sud XIに留学中
 



 Université de Paris-Sud, Bâtiment 409, 

 職場である研究棟。結構古い建物です。



Radiorésistance et mutagénèse chez les

Deinococcaceae研究室のSommer 教授(左から5番目)

と私(右から2番目)とラボの仲間と

〜極限環境微生物〜
 私は、東京薬科大学大学院在籍時から70℃という高温環境を好んで生育する高度好熱菌サーマス・サーモフィルスや高線量の放射線に耐性をもつ放射線抵抗性細菌デイノコッカス・ラジオデュランスといった極限環境に住む“ちょっと変わった”微生物を研究対象にしてきました。極限環境とは温度、pH、圧力、乾燥、放射線耐性などといった一般的な微生物の生育環境と掛け離れた環境を指します。博士課程終了後は、パリ南大学(Université de Paris-Sud)に留学し、ラジオデュランスの放射線耐性機構について研究しています。ラジオデュランスは、ヒトの致死線量の1000倍以上の放射線に耐性があり、他にも紫外線やDNA損傷を誘発する化学物質などにも高い耐性を示します。この驚異的な放射線耐性の理由の一つに強力なDNA修復能力が挙げられます。ラジオデュランス特有のDNA修復タンパク質も発見されていますが、他の生物が持つ既知のDNA 修復タンパク質のほとんど全てを持っていることも知られており、DNA修復能力の詳細ははっきりと分かっていません。ラジオデュランスのゲノム中には未だ半数を超える機能未知遺伝子が眠っていて、この中に放射線耐性に大きく寄与している遺伝子群があることが十分に予想されます。現在いくつかの遺伝子を標的としてDNA修復機構や放射線耐性機構との関連性及びその機能解明の研究に取り組んでいます。

〜フランス生活〜
 仕事の話ばかりでしたので、フランス生活の話も少ししたいと思います。パリ南大学はその名の通り、パリより南へ約30kmのオルセー(Orsay)という街にあります。キャンパスは非常に広大で自然に囲まれており、大学周辺にはサッカーグランド、テニスコート、プールなどがあります。私はオルセーにアパートを借りて住んでいて、アパートから大学へは徒歩で20~30分程度かかります。家具付きのアパートでしたので食料品だけ買ってくればすぐに生活することができました。自宅周辺にはスーパーが一軒とレストランが数軒ありますが、コンビニなどある訳がなく、夜8時を過ぎると店は閉まってしまうため食料を手に入れるのが困難な状況になります。大学の同僚たちの帰宅時間が早い(19時頃には誰もいなくなります)理由は、こういうところにあるのだろうなと感じます。パリはとても有名な観光地なので、プライベートで旅行されたことのある方も多いと思います。自宅のアパートからは郊外高速鉄道RER B線で40分ほどでパリ市内に行けるので週末はパリに出かけて凱旋門や美術館、博物館の観光・鑑賞や料理、ワインを楽しみつつ日々の疲労をリフレッシュしました。ただ、基本的にフランス語なので苦労も多々ありましたが・・・。

~終わりに〜
 生粋の日本人である私にとって、自分と異なる考え方をする人々に出会い“キリスト教の”、“欧州大陸の”、“石造の”文化に触れながら研究や生活できることは、大変有意義なことであり自分の価値観や視野を広げることができる絶好の機会であると感じています。東京薬科大学で出会った極限環境微生物に夢中になり、気がつけばフランスに来ていたこの人生、何がきっかけでどう転ぶか分からないものです。しかし、東京薬科大学で過ごした時間が大きく影響していることは確かであり、大学で学んだこと、経験したことがフランスでも確実に役立っています。夢中になるものを持っている人はそれを大事に育て、そんなの無いよという人も焦らずゆっくり探してみて下さい。大学で生活する、社会に出る前、というのはそういう時間だと思います。何か考えがあるなら、まずは行動してみることが一番かもしれません。自身もまだまだ未熟なくせに偉そうな事を言ってしまいました。最後になりますが、大学院時代にお世話になりました先生方や諸先輩方、仲間たち、そして良くして頂いている現ラボメンバーに感謝致します。
 
日本の環境・食品検査分析の 信頼を支える仕事に誇りを感じます。

宮下 振一 さん

神奈川県立厚木高等学校出身
2011年3月 大学院博士課程修了(環境応答生物学、現環境応答植物学研究室)
独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 無機分析科 環境標準研究室 研究員

  産業技術総合研究所の計測標準研究部門は、日本の計測の基準(計量標準)を作り、社会や産業界に供給する重要な役割を担っています。その中で私が所属する環境標準研究室は化学分野における計量標準の整備を担当し、 日本の環境・食品検査分析の信頼性確保をサポートしています。業務のひと つが組成標準物質を開発・供給することです。組成標準物質とは、分析結果の正確さを確保するために測定の基準として用いられる物質です。現在は玄米粉末標準物質を手がけています。自分が開発に携わった標準物質が日本の計量標準になることに重圧もありますが、自分の存在意義と誇りを感じます。 

 昨今は環境問題や食の安全への関心が高まり、これまで以上に高度な分析技術 や精度管理が求められています。そうしたニーズに応えるため、今後は分析機器・ 技術の開発にも力を入れていきたいです。そのためにまずは、当研究室で開発した分析技術の実用性を証明し、多分野での活用を目指した取り組みを行っています。 

 仕事で迷ったときには厳しい道を選択するのが私のモットーです。大学時代にもあえて厳しいと評判の研究室を選択しました。4年次から海外での成果発表を 義務づけられるなど、何度も冷や汗をかく状況を経験しましたが、そのことがすべて財産となり、今の私を支えています。
 
都筑研から生まれた2つの企業、リバネスとユーグレナ


丸 幸弘 さん
2001年3月 環境生命科学科(現応用生命科学科)環境応答生物学研究室 卒業
2006年3月 東京大学大学院 農学生命科学研究科 博士課程 修了 
株式会社リバネス 代表取締役CEO
株式会社ユーグレナ 技術顧問
NHK総合テレビ「堂本光一のちょこっとサイエンス」にもサイエンスサポーターとして出演。
 私は、1997年に東京薬科大学の生命科学部に入学し、2001年に卒業しました。4年次に所属した環境応答生物学研究室(現・環境応答植物学研究室)では微細藻類の糖脂質SQDGに関する研究を行っていました。昼過ぎに登校し本格的に実験を始めるのは夜で、一晩中実験をして、研究室の床で寝る。そして朝、出勤された都筑幹夫先生に、床に転がっているところを見つかるのですが、そこからディスカッションが始まります。話題は、社会のこと、教育のこと、将来のことなど、さまざまでした。それが終わると、私はやっと家に帰る。いま思うと、はた迷惑な生活を送っていました。この時の研究経験や先生からの教えは、今の私の経営哲学や、経営する企業の事業内容にも深く影響しています。

リバネスの設立メンバー

 東薬を卒業した後、東京大学大学院 農学生命科学研究科に進み、そこでも研究の日々を過ごしていました。その中で、子どもの理科離れ、そしてポスドク問題といった研究者の報われない姿に触れ、自分たち研究者が活躍できる社会をつくりたい、研究活動や科学技術の発展をともに推し進める仲間をつくりたい、と強く思い、修士2年の2002年6月、東薬、東大、東工大の仲間と有限会社リバネス(現株式会社リバネス)を設立しました。研究室で毎日自分たちが行っている研究のおもしろさを子どもにも伝えることで、子どもたちも、伝える側の自分たちも育っていく場所にしようと、Leave a Nest(巣立ち)を社名にしたのです。

ディスカッションをする丸&出雲社長

 また、藻類の研究を通じて、出雲充さん、鈴木健吾さんと出会い「藻類ベンチャー」をやろう意気投合し、2004年から準備を始め、2005年の8月にユーグレナを設立、技術顧問として参画しました。ユーグレナの設立当初も、3人でよく都筑先生に会いに行って、藻類の大量培養方法などについて、勉強させていただきました。(今、出雲さんは同社代表取締役、鈴木さんは取締役として活躍しています)
 リバネスとユーグレナ、そして都筑研とは、とても深い縁があります。研究室の後輩だった立花さんは2008年、村井さんは2011年にリバネスに入社し今も在職中、そして朝山君はリバネスにインターンとして参加したのち2009年にユーグレナに入社し、今は研究開発のリーダーとして活躍しています。この2つの企業の基盤は、都筑研で培われた研究経験と人材であると言っても過言ではないと思います。
 リバネスは現在、従業員数44名、教育開発、人材開発、研究開発、メディア開発、地域開発、戦略開発の6つの事業を軸に、東京、大阪、沖縄の国内事業所のみならず、アメリカ、シンガポールに拠点を設け、最近は、インドネシア、マレーシアへも活動範囲を広げています。一方ユーグレナ社は、設立から7年、2012年の12月20日にマザーズに上場するまでに成長しました。

 都筑先生の口ぐせは「まあ、とにかくやってみれば」。私はまず行動せよ、ということを都筑先生から学びました。卒業してからもう10年以上が経ちますが、年に数回は研究室を訪問すると、先生はいつも笑顔で迎えてくれ、相変わらずのディスカッションに付き合ってくださいます。私はこの、かけがえのない場をこれからも大事にしていきたいと思っています。
 都筑研から、リバネスとユーグレナという2つの企業が誕生しましたが、私はこれからももっと、様々なものが生まれる場所になってほしいと思います。在校生と卒業生、そして先生のネットワークやコミュニケーションから生まれるものは沢山ありますので、研究室のみなさんは、私が訪問した際には、ぜひ声をかけてください。また、高校生のみなさんは、新しいものが生まれる研究室に、気軽に遊びに来てください。そして一緒に、何か新しいことを始めませんか。
 
大学院時代の経験は私の財産です


照井敬子(旧姓 渡辺)さん

平成13年 東京薬科大学生命科学部分子生命科学科(細胞機能学研究室) 卒業
平成18年 東京薬科大学大学院生命科学研究科生命科学専攻博士課程修了 博士(生命科学)
平成18年 日本ミリポア株式会社 バイオプロセス事業本部 アクセスサービスラボ入社
平成22年 日本ミリポア株式会社 バイオプロセス事業本部 バリデーションサービスラボ退職
平成23年 国立遺伝学研究所 生命情報•DDBJ研究センター

 私は高校生の時に、生命の進化の番組をみて、東京薬科大学の生命科学部の細胞機能学研究室(現極限環境生物学研究室)で勉強したいと思い、入学しました。私の大学時代の研究テーマは、「地球上に生命が誕生した時の生命は一体どんなものだったのかを、好熱菌を用いて実験的に検証すること」でした。私は、卒業研究から博士過程終了まで、生命科学部の細胞機能学研究室(現極限環境生物学研究室)で先生方、先輩方の親身なご指導のもと、自由に好きなだけ研究をさせてもらいました。また、研究室の備品の管理等を通じて、過ごしやすい研究室の維持を目指し、後輩学生への研究指導を通じて、1人1人に合わせた指導方法を色々と工夫することを学びました。

 博士号修得後、研究室で学んだ、計画性や行動力を社会で活かしたいと思い、日本ミリポア株式会社のバイオプロセス事業本部のバリデーションサポートラボラトリーに就職しました。私の仕事は、目薬や注射剤を製造するときに基となる薬液の細菌検査です。製薬メーカーの製造部門の方と打ち合わせをしながら、試験計画書を作製し、承認を得るまでの一連の作業を納期までに実施します。担当する会社や薬液は複数あるので、正確かつ迅速な作業が要求されました。私が、大学時代に得た計画性と行動力は、顧客との信頼関係を強固にすることに役立ちました。また、試験スケジュールの調整や新入社員へのトレーニング等、問題なく業務を遂行することができました。ミリポアでの仕事は、非常にやりがいがありましたが、育児に集中するために2年前に退職しました。

 最近は、2人の子供の育児の合間に、国立遺伝学研究所でのゲノムデータベースの情報集積作業の仕事を始めました。大学時代に得た研究知識と論文作成の経験は、遺伝子情報を決定する作業に役立っています。現在、家事・育児・仕事と慌ただしい毎日ですが、充実した日々を送ることが出来ています。これも、全て大学院生時代に実験だけでなく、色々なことを経験させてもらったからだと常に感じ、先生方をはじめとする研究室の皆さんに感謝しております。

 
視野を広く、枠に囚われない

ブラジルEmbrapaダイズ研究所にてラボのみなさんと。前列左から2番目が筆者。
       


吉田 拓也 さん

平成18年3月 環境生命科学科(現応用生命科学科)環境応答生物学研究室 卒業
平成23年3月 東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻 博士課程修了 博士(農学)
平成23年4月 東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻 特任研究員
平成24年1月 同 特任助教

ブラジルパラナ州の地平線まで続くダイズ畑。日本を飛び出すと物の見方も変わります。

 現在特任助教として東京大学大学院農学生命科学研究科に務めていますが、東薬で学生生活を謳歌していた時には、よもや10年後に今の職業に就いているとは夢にも思っていませんでした。というのも、大学生の頃は剣道一筋で、授業や実習も淡々とこなし、勉学や研究に特別興味も持たず、将来についても何のビジョンも持ち合わせていなかったからです。ですが、2年次の植物生理学の授業を受け、植物という生き物の不思議さ、特にCAM型植物の講義を通じ、植物が過酷な環境で生存する仕組みに興味を持ち始めました。

 その後、3年次に進級してからは特別演習、4年次からは卒業研究で環境応答生物学研究室(現環境応答植物学研究室)にお世話になりました。東薬で植物研究に携わるために一番手っ取り早い研究室として選択したわけですが、それ以上に都筑先生をはじめ先生方、先輩方には研究の基礎の基礎を叩き込んでいただき、研究室選びで悩んでいる学生がいたらぜひお薦めしたい研究室です。少し余談になりますが、環境応答で培った人間関係は今でも私の人生の重要な部分を占めており、都筑先生はもちろんのこと、このページの杉本さん(京大・山口大)、山岡さん(POSTECH)、緑川くん(UC Davis)とは学会で会えば近況などを話しますし、彼らの仕事ぶりを論文などで見ては自分の仕事への活力に換えています。もう一つ余談として、卒研ではラン藻(シアノバクテリア)を用いた光シグナル伝達経路に関る研究をさせていただきましたが、この程、
私が一部関った研究として論文の雑誌への掲載が決まり、とても嬉しく思います。

モデル植物のシロイヌナズナ。4週間で20 cmほどの大きさに育ちます。

 さて、東薬を卒業した後は、はじめに興味を持った環境ストレスについて高等植物を用いて研究がしたいという思いから、現在所属する植物分子生理学研究室を受験し、大学院修士課程からお世話になっています。大学院では、モデル植物のシロイヌナズナとイネを用い、植物ホルモンであるアブシシン酸シグナル伝達経路に関る転写因子を中心に研究をおこなってきました。アブシシン酸は、乾燥や浸透圧ストレスにより植物細胞内に蓄積する植物ホルモンであり、植物が普遍的に備えている水分が少ない環境に耐える仕組みと密接に関わっています。現在も大学院時の研究テーマの延長で研究、そして研究室の学生への教育に携わっていますが、今の職業に感じる魅力を3点挙げてみます。

 1つ目は、研究という仕事が過去の研究の積み重ねの上に成立しているということです。かなり難解ではありますが、例えば、みなさんが良く使うであろうGoogleの1つのサービスで、論文を検索することのできる「Google Scholar」というページにアクセスしてみてください。そこには、全く唐突に「巨人の肩の上に立つ」という言葉が書かれているはずです。これは、かのアイザック・ニュートンが好んで使ったとされる慣用句ですが、意訳すると上記のようなこと(研究という…)を示している言葉です。興味のある方は詳しく調べてみてください。
 研究というのはそのような性格を持つ仕事ですので、他人の研究にどれだけ影響を与えられるかが、良い研究の1つの尺度となります。我々研究者は、研究成果を論文という形で発表しますので、論文がどれだけ多くの人に読まれているか、どれだけ多く他の論文に引用されているか、というのが研究の評価につながります。評価と言ってしまうとかなりドライな印象を与えますが、自分の書いた論文が他人に引用されるというのは、今まで味わったことのない圧倒的な喜びを与えてくれるものだということを、論文発表後1年も経つと強く実感するようになりました。学会などで全く知らない人から声をかけられるというのもかなり嬉しいもので、これが私の感じる研究という仕事の魅力のひとつです。

 2つ目は、自分が世界の最先端の研究をしているということです。まだ世界で誰も知らないことを明らかにする、それが研究という仕事です。そのテーマについて世界で一番詳しいのは自分であるという強い信念を持って研究をおこなうのはとても大変ですが、同時にとてもやりがいのある仕事です。いつか「その分野の講演をぜひあなたにしてほしい」と言われるのが、私の夢のひとつです。

 3つ目は、科学は世界共通だということです。多くの場合、英語が公用語とみなされていることも幸いして、少しの英語力があれば、世界中どこの国でも研究者として働くことが可能ですし、学会などで世界各国を巡ることができるのは、研究者という仕事への唯一のご褒美かもしれません。また、今の所属研究室では海外の研究所と共同研究していることもあり、2012年の1月には2週間ブラジルに出張してきました。現地はポルトガル語ですが研究所内は英語で十分通じましたし、英語で打合せをし、自分のやりたい実験を英語で交渉するというのは、海外の研究所ならではの貴重な経験となりました。

 以上が、私が感じている研究者という仕事の魅力ですが、最初に記した通り、東薬に学んでいた時からぜひ研究者になりたいと思っていたわけではありません。なんとなく東薬に入学し、なんとなく植物生理学に興味を持ち、研究に打ち込む間に次第と形成されてきたものです。せっかくなので私見を述べさせてもらうならば、東薬で過ごす大学4年間はいろいろなことに興味を持ち、失敗を恐れずチャレンジし続けることが重要なことだと思います。もちろん、明確な目標を持って東薬に入学してきた方はとても素晴らしいし、ぜひ初志貫徹してほしいと思いますが、今はっきりと目標を掲げることができなくてもそれはそれで良いと思います。視野を広く、枠に囚われず何事にも挑戦できる環境が東薬には整っていますし、充実した4年間を過ごすのに東薬以上の学校はあまりないように思います。

 そんなことを言うと立場上少し問題ですが、東薬の卒業生が社会の様々な分野で活躍されることをOBの一人として期待しています。。

東京大学大学院農学生命化学研究科 応用生命化学専攻 植物分子生理学研究室


 
一生もののテーマ
2009.2. Gordon Research Conference on “Plant Lipids: Structure, Metabolism & Function“での写真。最前列左から7番目にいます。      




山岡 靖代 さん

平成17年3月 環境生命科学科(現応用生命科学科)卒業(環境応答生物学、現環境応答植物学研究室)
平成20年3月 東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 修士課程修了
平成23年9月 埼玉大学大学院 理工学研究科 生命科学コース 博士後期課程修了 博士(理学)
平成23年10月―平成24年3月 日本学術振興会 特別研究員
平成24年4月― POSTECH Department of Life Scienceポスドク研究員

2012.7.
International Symposium on Plant Lipids (ISPL2012) で訪れたスペインの市場にて。
POSTECHのYoungsook Lee教授(左端)と私(右端)。

 私は、大学入試の合格発表後、東京薬科大学生命科学部と他大学のどちらに入学するかを決めかねていたところ、その分野に精通する知人から、「東京薬科大学生命科学部には、各分野で活躍し業績をあげている先生が多い」と聞き、東京薬科大学への入学を決めました。東京薬科大学は、山の中に建てられた大学で自然に恵まれた環境にあります。最寄り駅からは若干遠いのですが、バスが頻繁にでているので、通学に不便があった記憶はありません。緑に囲まれたとても居心地の良いキャンパスです。

 学部生時代は、「科学」に没頭する前に「ダンス」に没頭しました。結成されて数年しか経っていなかったダンスサークル(現ダンス部)は、アットホームで居心地がよく、授業時間以外はいつも体育館前に集まって仲間と踊っていました。文化祭で発表するという目標に向けて、自分たちのオリジナルの踊りをつくり、工夫し協力し合いながら完成させる。うまく踊れないなら、朝から深夜まで何時間もかけて根気よく練習する。そして、本番で踊りきったあとに皆で味わうあの達成感。現在の研究生活においても、これらの独創性・工夫・根気・協調性はとても大切なことであり、今振り返ると、それを東京薬科大学の仲間たちと共に気付かないうちに磨き上げていたのだと思います。

2012.3.
MALDI-MS解析に使用したサンプル(ユリの葯)。

 4年生になると応答研(現環境応答植物学研究室)に配属しました。応答研は、皆が和気あいあいとしていて雰囲気が良いだけでなく、指導を担当してくれる先生や先輩方は博識で、科学に精通する多くの研究者を輩出する研究室でもあります。卒業研究では、植物脂質に関する研究を行っていました。テーマの決まった当時は、「遺伝子でもタンパク質でもなく、なぜあぶら?」と半ば消極的だったのですが、これがまた面白いこと。踊りと同様に、すぐに研究に打ち込みました。脂質は、細胞自身やすべてのオルガネラの構造維持に重要であり、さらに、脂質自身がシグナル物質としてタンパク質の活性調節など多くの生理機能にも欠かせないのです。また、植物脂質はバイオディーゼルとしても注目されているため、多くの企業が関心をもっている分野でもあります。東京大学大学院理学系研究科に進学した後も植物脂質研究を選び、細胞内に少量しか含まれていないホスファチジルセリンという脂質が花粉成熟に重要であることを明らかにしました。指導教官(西田生郎教授)の異動に伴い埼玉大学大学院理工学研究科に移った後には研究成果が認められ、Gordon Research Conferenceという名誉ある学会から研究発表の依頼を2年連続で受け、学生にして国際学会での口頭発表を2度も経験させてもらいました。近年、脂質解析機器が改良され、多岐にわたる脂質代謝物の解析が可能になってきました。その技術を学ぶため、学振特別研究員として埼玉大学に在籍していた時に、北テキサス大学で最先端の脂質解析機器(MALDI-MSおよびDIES-MS)を用いてユリの葯の脂質イメージング質量分析に取り組みました。自分のアイデアと最先端の機器を用いて誰も知らないことを明らかにするという、脂質解析の可能性に触れたとても有意義な一ヶ月間でした。

 現在は、韓国のPOSTECH(ポハン工科大学)でポスドク研究員として働いています。POSTECHは、設立50年以内の大学で世界1位の業績を誇る大学です。私の所属する研究室は、元来ABCトランスポーター研究で多くの業績を上げている研究室なのですが、近年、脂質蓄積に携わるABCトランスポーターなどの因子を用いてバイオディーゼルとなる油脂を蓄積させることを目的とした研究に取り組んでいます。脂質解析には、各脂質分子種に合わせた抽出技術や解析機器に関する知識を必要とするので、その経験があると重宝されるようです。また、光合成と脂質、細胞分化と脂質、花粉成熟と脂質など、あらゆる分野とのコラボレーションが効きます。「一芸は身を助ける」とはこのことでしょうか。今後も、研究生活が続く限り、植物脂質を軸とした研究を続けていきたいと思っています。

「一生もののテーマ」を与え、研究者として大切なたくさんのことを教えて下さった東京薬科大学のあたたかい先生方や先輩方、仲間たちに今でもとても感謝しています。



2012.4.
北テキサス大学のChapman教授とラボの仲間と。

2011.4.
埼玉大学大学院植物分子生理研究室の西田生郎教授(左端)と私(右端)とラボの仲間と。

 
生物に学ぶ光エネルギーの利用


現在の職場の学科によるリトリートの集合写真


緑川 貴文 さん

平成18年3月  環境生命科学科(現応用生命科学科)卒業(環境応答生物学、現環境応答植物学研究室)
平成22年3月  東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 博士課程修了 博士(理学)
UC Davis Department of Plant Sciences ポスドク研究員

 地球上の生命を維持するためのエネルギーの多くは光合成によって賄われています。そのため、生命そのものを考える基礎研究としても光合成は重要な位置にあります。また、太陽エネルギーには利用の余地がまだ十分にあることから、エネルギーや物質生産といった応用面でも広く研究されている分野です。

土地と日光が豊富なカリフォルニアの風景

 私は、大学院ではシアノバクテリア(ラン藻)を対象に、光化学系の遺伝子がどのように調節されるのかを研究していました。シアノバクテリアが他の細胞に取り込まれ、藻類・植物のもつ葉緑体となったと考えられていて、これは細胞共生説といわれています。「細胞の中」という環境に置かれ、葉緑体となったシアノバクテリアは独特な方向へ変化していったのですが、その変化の一つに「葉緑体の外(細胞質)からタンパク質を取り込む」という現象があります。現在の私は、縁あってカリフォルニア大学Davis校で博士研究員として、植物でタンパク質が葉緑体へ取り込まれ、チラコイド膜へと移行するしくみを研究しています。海外に出た事自体はたまたまでしたが、日本以外の研究環境を一端でも体験できていること、また外から日本の様々な側面を見られることは研究以外の面でも興味深く、よい機会に恵まれたことに感謝しています。エネルギーや物質生産といった応用面でも広く研究されている分野です。

 大学時代は生命科学が好きで東京薬科大学へ入学したこともあり、専門の講義を取れるだけ取って楽しんでいました。単位はそれほどには落とさなかったかと思います。特にこの時期に微生物や生物多様性について興味を持ったのが今の分野に進んだきっかけでもあります。生命科学について、今の専門でない部分も含め多岐に渡って学べたことはとても有意義だったと今も感じています。また、卒業研究の短い期間でしたが、所属していた環境応答生物学研究室(現環境応答植物学研究室)はシアノバクテリアと藻類を広く扱っていて、いろんな興味を育てて頂けた場所でした。当時の自分は緑藻を扱っていましたが、実際に他の生物も自分で育ててみればよかったかなとは今も少し残念に思っています。

 大学は生活の為だけでない様々なことを考えたり学んだりできる素晴らしい時期だと思います。是非いろいろな事に興味を持って、楽しんでください。


 
大学で習得したものを実践的な場所で活かしたいと思っています


木下 健司 さん

平成15年3月 環境生命科学科(現応用生命科学科)卒業(環境動態化学研究室)
平成20年3月大学院博士後期課程修了 博士(生命科学)(環境動態化学研究室)
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター 勤務

 現在勤務している東京都立産業技術研究センターは中小企業への技術支援を目的としている機関です。皆さんが普段使われている、あるいは目にしている様々な製品や部品はあらゆる信頼性試験や耐久性試験を潜り抜けたものだと考えられます。製品開発や品質証明の他、異物混入等のクレーム対策、品質管理や故障解析には高額な装置が必要となることがあり、会社自身で対応することが困難となります。そのような場合にセンターの所有する機器を利用して頂いたり、技術相談や試験依頼を行っております。私自身も日々、主に中小企業で働く方々からの技術相談への対応や依頼された試験に従事しています。それまではほとんど意識することがなかったのですが、例えば真夏の炎天下の時期を過ぎても退色していない塗装を見て感心するなど、今は街を歩いていても物の見え方が変わるようになりました。

分析機器の前で。

 進学のきっかけは、「生命科学」という響きに惹かれたこともありますが、元々関心のあった環境汚染物質について学びたいということがありました。その後研究室ではダイオキシンの簡易分析法や化学兵器に関係するヒ素化合物の環境中での挙動をテーマとして研究しました。大学生活は勉強やクラブ活動に楽しく充実した時期でしたが、特に研究室に入ってからは先生方をはじめ様々な人と接する機会にも恵まれ、様々な経験をさせて頂きました。当時毎日のように見ていた11階の研究室から見える夜景も懐かしく感じます。大学を出た後は習得したものを実践的な場所で活かしたいという思いがあり、縁あって現在の仕事へ就くこととなりました。現在携わっている研究や業務における対象は工業製品や材料が中心となり、相談内容も多岐にわたりますので、新たに勉強しなければならないことも多いですが、そのベースとなる考え方には、大学時代に細胞培養や動物実験から機器分析まで幅広く学ぶことで得られた経験や知識が活かせていることを、これまでに1000を超える試験に対応するなかで実感しています。

 
ヒトとケモノの“はざま”で研究する

斎藤さん
野生哺乳類を撮影するためのカメラを覗いている私

斎藤 昌幸 さん

東京都立町田高等学校 出身
2006年 環境生命科学科(現応用生命科学科)卒業(生態学研究室)
2011年 横浜国立大学大学院 環境情報学府 博士課程後期修了
東京大学 大学院総合文化研究科 特任研究員

斎藤さんの野生哺乳類の写真コレクション

東京周辺に生息する野生哺乳類たち(一部)。
すべての種名をご存知ですか?

 八王子の里山の一角に位置する東京薬科大学(以下、東薬)の構内には、ノウサギやタヌキなど数多くの野生哺乳類が暮らしています。卒業研究のために、大学構内の林内でノウサギの糞を数え始めたことから私の研究生活は始まりました。

 同じ地球上に暮らす人間と野生哺乳類の間には、さまざまな軋轢が発生しています。たとえば、都市開発が進むと生息できなくなる哺乳類がいます(「平成狸合戦ぽんぽこ」をイメージするとわかりやすいです)。一方で、中山間地で農業をするとシカやイノシシなどに農作物を食べられてしまいます。人間と野生哺乳類が共存していくためには、このようなさまざまな軋轢を軽減していく必要があります。どのような都市設計をすれば、都市の中にも哺乳類の生息場所を残していけるのか?農作物被害を防ぐにはどうしたらよいのか?このような問いに、生態学的な視点から少しでも答えていくことを目指して研究を進めています。

 小さいころから生き物に興味を持っていた私は、生態学を学べる大学に行きたいと思っていました。「生態学研究室がある」「ワンダーフォーゲル部がある」「地元(町田)から近い」という理由だけでよく調べもせず東薬に入学した当時18歳の私は、ミクロな生物学・化学などが授業の多くを占めているカリキュラムを見て愕然としました(そして、あやうく留年しかけました)。しかし、分子生物学的あるいは化学的な手法は多くの生態学研究に取り入れられているため、結果としてこのような分野の勉強をできたことは自分にとって貴重な経験となりました。
 
生命科学部には、多様な興味を支えてくれる懐の深さがありました


今清水正彦さん

2002年 環境生命科学科(現応用生命科学科)卒業(環境応答生物学、現環境応答植物学研究室)
2007年 東京大学大学院 農学生命科学研究科 博士課程修了
アメリカ国立衛生学研究所/国立がん研究所(NIH/NCI) Research Fellow

今清水さん

研究所(NIH/NCI)の近くにあるきれいな公園(Baker park)

 私は研究が好きなので、大学卒業後に大学院で博士号を取り、アメリカ国立衛生学研究所の国立がん研究所(NIH/NCI)で基礎研究を続けています。NIHは巨大な研究機関ですが、私の職場はメリーランド州のフレデリックというこじんまりとした町にあります。緑豊かでワシントンDCも近くて住むに良い所と思います。私の職場は、ロシア人、ポーランド人、フランス人、そして日本人(私)と少人数ですが国際色豊かです。偏った考えが優位にならないような批判をし合えること、他の文化を楽しめること等、国際チームで働く利点は多いと思います。研究所では、遺伝子発現を行う酵素反応の正確性を維持する仕組みを調べています。 この酵素反応が間違いだらけだと生物は破綻しますから、正確な酵素反応の仕組みは生物の本質の1つと思います。アメリカに来て幸運だったことは、自分の興味の範囲で、とても深い議論ができる人と出会えたことです。

今清水さんの職場の人形

職場のみんなでそれぞれの国の要素を入れた作った人形。共同研究のインドもはいってます。日本の要素わかりますか?。

 仕事選びの基礎となっているのは、生命科学部での師や友人、学問との出会いです。高校の時は、何かしたい強い欲求があったのですが、それが何か良くわからないままブラブラし、卒業するのがやっとの状態でした。それが何であるかが明確になり、目標に向けて健全に努力するようになったのは、生命科学部の沢山の恩師と環境が、自分が育つためのきっかけを提供して下さり、しっかり支えて下さったからです。大学というのは、座って講義を聴いてノートをとっているだけでは、無意味な所と思います。自分が育つきっかけは、もちろん自分にも必要で、私の場合は研究室を訪れたのがそのきっかけと思います。一度足を踏み出せば、生命科学部には、多様な興味を支えてくれる懐の深さがありました(今もあると信じます)。
 また、学年を問わず良き友人に出会いました(友人の方が先輩・後輩という概念に優先するので、全て友人と書きます)。私は3回生の時から、呼ばれなくとも昼も夜も研究室に入り浸っていたので、研究室内に沢山の友人ができました。

卒業生とベンソン先生夫妻

著者が学部4回生の時、ベンソン先生夫妻と都筑研究室メンバー。最後列の左から4番目が著者。

1つ学年が上の友人の家によく泊まり込み、沢山のこれからの夢を語りました。その友人は、大学院でバイオ教育の会社(
リバネス)を作り、今ではその事業を科学全般に広げています。 3つ学年が上の友人(当時)と私は結婚し、アメリカで娘が産まれました。私たちにとってかけがえのない新しい命も、生命科学部での出会いから始まったことになります。海外生活ですから、家族は大きな心の支えになっています。他にも、社会で活躍されている友人は沢山いて、良い刺激になります。私は出世からほど遠いですが、自分の興味の中枢で仕事を行うことは実現できています。この先も研究を続けることに沢山の不安がありますが、10年以上前の大学での出会いが多くを占める今が幸せであることは確かです。
 
とりあえずやってみる。そしてぶつかってみる。というやり方。 

杉本さん

スイスでの学会集合写真。この中のどこかにいます。

杉本貢一さん

平成13年 環境生命科学科(現応用生命科学科)3年終了時、大学院に飛び入学
平成15年 大学院修士課程修了 (環境応答生物学、現環境応答植物学研究室)
平成19年 大学院博士課程修了 博士(生命科学)
京都大学 生態学研究センター
 /山口大学 医学系研究科 ポスドク研究員

杉本さんの実験仲間のむし

実験仲間のむし(ハスモンヨトウ)です。植物を食べる困ったやつです。ラボではお世話も自分たちでします。

 
私は“植物同士の会話”について研究しています。 
と言うと「周りの人にこいつは何をやっているんだ!?」と思われます。おかげで何か怪しいことをしているなぁと憶えてもらえる事が多いです。ではでは実際に何をしているのか?というと、『食害虫によるダメージを受けた植物から放散される揮発性化合物を周囲に生育している健全な植物が認識して、その植物が近づきつつある“敵”に対する防衛準備を始める』という植物間の情報伝達現象について、その分子メカニズムを解明しようとしています。山口大学・ドイツマックスプランク化学生態学研究所・オランダアムステルダム大学・イタリアトリノ大学と連携し、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら楽しく活動しています!この自由度は、ポスドク生活を選んだ特権だと思って、今しかできない楽しみ方を満喫しています。もちろん、研究成果もどんどん発表しつつ・・・?まぁ、それはこれからを見ていて下さい!ということで。

杉本さんの実験装置

簡単な工夫をして実験しています。チャンバー内で揮発性化合物を曝露中。

 さて、こんな私が考える「東京薬科大学・生命科学部の美点」は自由さです。理解力・包容力にあふれる諸先生方とキャンパスの雰囲気は何物にも代え難い。医療・生命・環境というキーワードに興味を持って入学する人が多いと思いますが、そうでない人もなんとかやっていましたね(笑)。私の場合、ぼーっと過ごした学部時代も、実験にがつがつ過ごした修士課程も、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら研究してるっぽく過ごした博士課程も、先生方が受け入れてくださったおかげで楽しく過ごすことができました。おかげで、今も怪しい(?)研究を楽しく続けることができています。入学を考えている人も、コース選択で迷っている人も、研究室選択で悩んでいる人も、進学しようか相談したい人も、まずは実際に体を動かして訪ねてみたらどうでしょう。新しい芽・目が開くかもしれませんよ!「まずは進んでぶつかってみる」はまだ見ぬ将来の自分へのメッセージも兼ねてここに記しておきます。

京都大学 生態学研究センター 高林研究室
山口大学 医学系研究科 松井研究室

 
カイコにおける大量発現系や遺伝子発現抑制法の研究に携わっています

小林さん
小林 功 さん

平成15年 大学院博士課程修了 (環境応答生物学、現環境応答植物学研究室)
独立行政法人農業生物資源研究所  勤務

小林さんのカイコ

ヒトのカテプシンAを発現するカイコ幼虫(約600頭)

 私が高校3年生のとき、東薬大に新学部として生命科学部が開設されることを知りました。環境と生命というキーワードからくる漠然としたイメージしかありませんでしたが、以前から、自然に非常に興味があり、また大小問わず生き物が好きということもあって、生命科学部の環境生命科学科(現応用生命科学科)を受験することにしました。幸運にも合格することができ、生命科学部の1期生としてキャンパスライフをスタートすることができました。大学4年生のとき、環境汚染に関わる研究をしたいと思い、環境応答生物学研究室(現環境応答植物学研究室)で研究生活をスタートさせました。私が担当した研究テーマは、難しい反面、非常に面白い内容だったため、学部4年生から博士課程修了まで同じ研究を続けました。研究を遂行するにあたり、新しい技術を習得する必要があり、博士課程の3年間は、帝京大学医学部八王子キャンパスにて、本格的に藻類の遺伝子工学を学びました。
 卒業後、(独)農業生物資源研究所においてカイコの研究に従事することになりました。この研究所は、農業分野に関する生命科学研究の拠点となっており、農作物や家畜の生産性の向上や農業生物を利用した新たな産業の開発を目標にしています。私は、その目標の達成に欠かすことのできない技術として、カイコにおける大量発現系や遺伝子発現抑制法、それと遺伝子破壊法の研究に携わっています。このような技術を用いて共同研究を積極的に進めており、現在、最も力を入れている研究は、リソソーム病の治療薬になるヒトのカテプシンAの生産です。この研究は徳島大学と共同して行っており、この成果を社会へ貢献できるように日々頑張っています。
 藻類からカイコへと大きく研究対象が変わりましたが、どちらも生命科学の研究であり、実験手法も共通したところがたくさんあります。また、私は生き物が好きです。そのようなことから、スムーズにカイコの研究に移行することができたのではないかと考えています。大学時代に苦労したことや先生方とのディスカッションなどで培ったことが現在の仕事にも役立っています。