研究の内容及び目的

分子細胞生物学研究室では以下の3つのテーマで研究を行っています。

1:小胞体の形態維持機構及び小胞体ーゴルジ体間の膜輸送経路の解明

 真核生物の構成単位である細胞には、膜によって囲まれた様々な細胞内小器官;オルガネラ(小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリア等)が存在し、それらオルガネラが機能を維持し、役割を果たすことが生物の生存に必要不可欠である。また、オルガネラが機能を維持するためにはオルガネラ間の物質のやり取りが必須であり、この過程は小胞と呼ばれる小さな脂質の袋によって媒介されている。


図)種々のオルガネラの観察像

                 
小胞体                                          ゴルジ体                 ミトコンドリア

 ホルモンや神経伝達物質といったタンパク質は小胞体で合成された後に小胞を介してゴルジ体へと運ばれる。ゴルジ体へと運ばれたタンパク質は修飾や選別を受けた後に細胞膜まで運ばれ、最終的に細胞外へと放出されることでその機能を発揮できる。この一連の運搬経路を細胞内小胞輸送と呼ぶ。

ムービーギャラリー)
VSVG-GFPts045の小胞体からゴルジ体への輸送
緑色は水疱性口内炎ウイルスのコードする糖タンパク質にGFPを融合させたもの。小胞体に存在するタンパク質が小胞に乗ってゴルジ体へ集積していく様子が見える。

ブレフェルジンA(BFA)処理によるゴルジ体の分解(ゴルジ体タンパク質のゴルジ体から小胞体への逆行輸送)
BFAはゴルジ体を分解させ、ゴルジ体タンパク質を小胞体へと逆行輸送させる。この輸送はチューブ状の膜構造体により媒介される。

 

 オルガネラの機能維持や細胞内小胞輸送の分子メカニズムに関して、世界中で活発な研究が行われているが未だ多くの現象が未解明のままである。
そこで、分子細胞生物学研究室では具体的には以下に示す内容を中心とし研究を進めている。
・小胞体膜融合および小胞体関連分解(ERAD)に関する研究
・ゴルジ体から小胞体への逆行輸送に関与するRer1タンパク質の解析


2:低分子量Gタンパク質および膜融合装置が関与する小胞輸送現象の解明


 細胞のダイナミックな運動や分裂には,外界との物質の出し入れ,すなわち小胞輸送が深く関わっている。小胞輸送は非常に多様なタンパク質や細胞膜脂質が協調的に機能することにより,その特異性が保たれているが,その機構の詳細は不明な点が多く残されている。我々は,特に,低分子量Gタンパク質や膜融合装置として機能するタンパク質に注目し研究を進めている。これら分子が,がん細胞の増殖や運動・転移と深い関わりがある増殖因子や栄養分子に対する受容体やタンパク質分解酵素を輸送する機構の解明を目指している。


  

(図1)              (図2)              (図3)


図1)増殖因子で刺激した細胞で見られるタンパク質の集積 (増殖因子受容体 ()と低分子量G タンパク質結合因子 (),核DNA())

図2)栄養因子受容体と低分子量Gタンパク質の細胞内分布 (栄養因子受容体 () と低分子量G タンパク質(),核DNA())

図3)がん遺伝子によって誘導される浸潤構造 (細胞接着分子 () と低分子量G タンパク質結合因子())



3:肺炎を引き起こすレジオネラ菌の細胞内感染経路の解明

 近年、抗生物質の効かない感染症の脅威が増しており、抗生物質に頼らない感染症治療法の確立が急務となっている。宿主細胞へと感染した病原菌は細胞に元々備わっている生理機能をハイジャックすることで自らの増殖に都合の良い環境を細胞内に作り出している。つまり、病原菌が宿主細胞の生理機能をハイジャックするメカニズムを解明することが新たな感染症治療法に繋がる可能性が考えられる。そこで、本研究では肺炎を引き起こすことが知られているレジオネラ菌(宿主細胞の膜輸送及び膜融合経路をハイジャックする病原菌;図1)を感染症のモデルとして、レジオネラ菌の細胞内感染経路の解明を目指す。また、一連の感染過程においてレジオネラ菌は宿主細胞にレジオネラ菌のタンパク質(エフェクター)を分泌することから(図2)、それらエフェクターの宿主細胞内における機能解析を行いレジオネラ菌の細胞内増殖
(図3)への関与を明らかにする。


   

(図1)                         (図2)            (図3)


図1)宿主細胞内に侵入したレジオネラ菌の細胞内感染経路

図2)レジオネラエフェクタータンパク質の宿主細胞への放出

図3)宿主細胞内で増殖したレジオネラ菌(レジオネラ菌が感染した細胞(感染16時間後)のDNAを染色した像)

   中央に見える丸い構造物が宿主細胞の核 

   核の周辺を覆っている無数の棒状の構造物が増殖したレジオネラ菌)